日本労働評議会 大阪府本部

2月28日 国際自動車第1次訴訟最高裁判決が出されました

主文は、破棄・差し戻しでした。

 
 理由の要旨は以下の通りです。

1 労基法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討し、判別できる場合には、割増賃金の金額が、通常の労働時間の賃金の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否かを検討すべき(引用・高知観光事件最高裁判決、テック・ジャパン最高裁判決)。

 売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金が同条の定める割増賃金といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない。

2 しかるところ、原審は、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否か、判別できる場合には、割増賃金の金額が、通常の労働時間の賃金の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否かを審理判断していないから、審理不尽の違法がある。

3 なお、原審は、法内労働時間や法定外休日労働にあたる部分とそれ以外の部分を区別していないが、前者につき支払い義務を負うかどうかは、労働契約の定めに委ねられていると解されるから、前者と後者は区別する必要がある。

4 未払い賃金の有無及び額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。

 

 最高裁判決は、国際自動車の賃金規則が、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否か、判別できる場合には、割増賃金の金額が、通常の労働時間の賃金の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否かを審理しなおすために、東京高裁に差し戻すと言っています。「通常の労働時間の賃金」とは、残業をしない場合の賃金、すなわち所定内労働時間の賃金のことです。国際自動車の歩合給は、「通常の労働時間の賃金」から残業代等の割増賃金相当額を控除した賃金です。これに、加えて、割増賃金に相当する金額を支払っても、元々の「通常の労働時間の賃金」から割増賃金相当額が控除されているのですから、「割増賃金に当たる部分」を支払ったことにはなりません。

 最高裁判決の論理を本件に当てはめれば、割増賃金が支払われたとは言えず、労基法37条違反により、会社は労働者に対して、未払いの割増賃金を支払わなければならなくなるはずです。

 一部の報道は、今回の最高裁判決を、「歩合給から残業代差し引く賃金規則は「有効」」と報道しました。これは判決の読み間違えによる誤報です。判決は、賃金規則が労基法37条に違反して無効なのか、有効なのかを審理するために、東京高裁に差し戻したのです。そして、最高裁判決の論理は、賃金規則が労基法37条違反であることを主張するための有力な武器になるのです。

 労評は、大阪地裁で、トールエクスプレスジャパン事件を闘っています。この事件においても、今回の最高裁判決の論理が闘いの武器になります。しかも、トールはトラック運転手の事案です。国際自動車のようなタクシー運転手が、ある程度の自由裁量に基づき労務を提供しているのに対して、トールのようなトラック運転手は、受け持ちの配送ルートが決まっており、会社からの指示によってやるべき仕事が決まっています。会社の命令で残業をさせられているのに、能率給から残業代等の割増賃金が控除されてしまうことが不合理であることは、誰の目にも明らかです。

 国際自動車事件とともに、トールエクスプレスジャパン事件は、労基法37条を守り、1日8時間、1週40時間労働制の原則を守るための重要な闘いです。全国の交通運輸労働者の権利擁護のため、共に闘いましょう。

 

 国際自動車事件弁護団 弁護士 指宿 昭一


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